「何か、もやっとする」と感じたら│パーキンソン病の介護で家族が知っておきたい関わり方4つ【安城市の訪問看護より】

2025年11月23日

パーキンソン病の方と暮らす家族に多い“もやっと”とは

パーキンソン病の方を介護していると、言葉にできない“もやっと”を感じる瞬間がありませんか?

「好きなことの時だけ動けるのは、甘えてるの?」
「夜中に何度も起きて、こっちまで眠れない…」
「言葉が聞こえづらくて、ついイライラしてしまう」
「危ないのに、どうしてそんなことするの?」


看護やリハビリの現場でご家族の方々と関わっていると、よく耳にするのがこの“もやっと”ですが、そんな気持ちは、決してあなただけではありません。

そしてそれは、「我慢が足りない」というわけでもないんです。
そこには、脳と体の変化とご家族の思いやりがすれ違ってしまう瞬間があるのです。

この記事では、安城市で訪問看護を行う私たちが、パーキンソン病の介護でよく見られる4つの場面を取り上げながら、「なぜそうなるのか」「どう関わればお互いにラクになるのか」を、やさしくお伝えさせて頂きます。

「甘えなの?」「どう接すればいいの?」と感じたとき、少しでも“ああ、そういうことだったのか”と心がほどけるきっかけになれば幸いです。

➀好きなことの時だけ動けるのは甘え?脳と気持ちの関係

「お出かけの時は立ち上がるのに、食事の時は“無理”と言う」
「デイではしっかり歩いているのに、家では動かない」

そんな姿を見ると、「やる気の問題?」と感じてしまうことがあります。

でも実は、気持ちが動く➡脳が働きやすくなる➥体が動きやすくなるのです。もう少し詳しく説明します。

パーキンソン病では、体を動かすスイッチの役目をするドーパミンが減ってしまいます。ところが、好きなこと・楽しいこと・興味のあることをしていると、脳が活性化してドーパミンが出やすくなり、体がスッと動けることがあります。

つまり、「好きなことの時だけ動ける」ではなく、「好きなことの時だからこそ動きやすくなる」のです。

これは甘えではなく、脳の自然な反応なんです。

■ご家族様にできること
・「動ける時間」を活かして、着替えや移動などを組み合わせる
・「動けない時」は責めず、「今はしんどい時間なんだな」と受け止める
→ご本人様もとてももどかしい気持ちかと思います。責められると余計に頭が真っ白になって動けなくなるとお聞きしたことが何度かあります。

■訪問看護でのサポート
私たちは、薬の効き方や体調の波を一緒に確認し、「動きやすい時間帯」を生活リズムに活かすお手伝いをしています。
「どこまで手伝うか」「どこは本人に任せるか」など、ご家族様と一緒に考えます。

② 夜中に起きてしまうのはなぜ?パーキンソン病の睡眠と体のリズム

「夜中に何度も起きてくる」「寝返りができないみたいでうめき声をあげる」
そんな夜の困りごとは、パーキンソン病ではよく見られます。

原因は、病気によって次のような病状や自律神経の不調などが起こるためです。

・寝返りのしにくさ(無動・動作緩慢)
・筋肉のこわばり(固縮)
・尿意が強くなる(夜間頻尿)
・血圧や体温のコントロールの乱れ

同じ姿勢が続くことで痛みやしびれが出て目が覚めたり、寝返りが打てないことで眠りが浅くなったりなど、病気によって睡眠のリズムを乱していると考えると、少し気持ちが楽になるかもしれません。

■ご家族様にできる小さな工夫
・寝具の高さ・硬さを見直す
・寝る前の姿勢調整やストレッチを手伝う
・夜間照明を足元に置いて転倒防止
・昼間はカーテンを開け、軽い活動で体内時計を整える

■訪問看護でのサポート
訪問看護では、睡眠リズムや薬の影響を確認しながら、服用時間の見直しサポートや環境調整を提案します。
「夜の付き添いがしんどい」と感じたら、どうぞ一度ご相談くださいませ。

➂声が小さい・返事が遅いときの接し方

「声が小さくて聞き取れない」「何か言いたそうなのに言葉が出てこない」
ご家族としては、どう対応すればいいのか迷いますよね。

パーキンソン病では、声を出す筋肉や呼吸の調整が難しくなり、「話す動作自体が難しい」状態になっていることが多いです。

■ご家族様にできる関わり方
・返事を待つ時間を少し長めにとる
・静かな環境で顔を見て会話する
・聞き取れなかった時は「もう一回教えてくれる?」とやわらかく聞き返す

■訪問看護でのサポート
呼吸や発声練習をし、ご本人もご家族も「伝わった」と感じられる時間を増やすようサポートします。

➃転びそうなのに危ないことをしてしまう理由と家族の支え方

「危ないよ」と言っても立ち上がってしまう。
「手伝うよ」と声をかけても「自分でできる」と言う。

ご家族はヒヤッとする場面が多いと思います。
でもそれは、“分かっていない”わけでも“わざと”でもありません。

パーキンソン病では、バランス調整が難しくなったり、
「動きたい」という気持ちと体の動きが噛み合わなくなったりします。

そこには「自分でできることを減らしたくない」という強い思いもあります。

■ご家族様にできる関わり方
・「ダメ!」ではなく「一緒にやろうか」と声をかける
・安全に“できた”感を残す工夫をする
・危険な場所(段差・マット・コード類など)を減らしておく

■訪問看護でのサポート
立ち上がり方・歩き方を観察し、転びやすいパターンや場所を確認します。
家具や導線を一緒にチェックした上で、動作の助言・環境調整・福祉用具のご提案などをし、転倒予防を図ります。

ご家族がついやってしまいがちな☑ポイント

パーキンソン病の介護では、ほんの少しの言葉や行動が、ご本人の動きに大きく影響します。
次のような関わりが出来るだけ避けられると良いかと思います。

△「やる気の問題でしょ?」と言ってしまう
→ 好きな事をする時にはドーパミンが出て、動きやすくなります。動けない時は気持ちを責めず、“今はしんどい時間なんだな”と受け止めましょう。

△「夜は寝てよ!」と強く言ってしまう
→ 眠れないのは体のこわばりや痛みのせいかもしれません。安心できる環境づくりを一緒に探してみましょう。

△ 話すのが遅いときに、先回りして答えてしまう
→ ご本人は一生懸命言葉を探しています。少し待つことで、“伝わった”という自信が育ちます。

△「危ないから動かないで!」と止めてしまう
→ 「一緒にやろうか」と声をかけることで、安全と自立の両方を守ることができます。

完璧にやろうとしなくて大丈夫です。

思わず強く言ってしまったり、イライラしてしまうのは、それだけ真剣に向き合っている証拠だと思います。

パーキンソン病の介護は、“優しさ”よりも“気づき”が大切だと感じます。

今日の小さな「気づき」が、きっとご本人の笑顔とあなたの心の余裕につながります。

最後に

安城市で訪問看護を行う私たちは、ご本人の体のケアだけでなく、ご家族の“もやっと”にも寄り添いながら、その人らしい暮らしを一緒に支えています。

「どう関わればいいか分からない」「このままでいいのか不安」

そんな時は、一人で抱え込まず、いつでも気軽にご相談ください。

なお、つくし訪問看護は、全体の約25%(4人に1人)がパーキンソン病の方で、日頃から多くの方と関わってきました。

その経験をもとに症状の変化や不安にいち早く気づき、より善いケアを届けられるよう心がけています。

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