パーキンソン病で「急に動けなくなる」のはなぜ?薬の効き方の波を訪問看護師が解説

2026年5月17日

パーキンソン病で「急に動けなくなる」のはなぜ? 薬の効き方の波(ウェアリングオフ)を訪問看護師が解説

「昨日は歩けていたのに、今日は朝から全然動けない」
「薬を飲んでいるのに、夕方になると急に動けなくなる」

パーキンソン病では、こうした“動ける時と動けない時の差”が出ることがあります。

これは、薬が効いている時間(オン)と切れている時間(オフ)の差が生じる「ウェアリングオフ」と呼ばれる現象で、病気の経過とともに多くの方に起きてきます。

「薬が効かなくなったのかな…」

そう感じて不安になる方は少なくありません。

でも実際には、“薬が効かなくなった”というより、“効く時間が短くなっている”場合があります。

「急に悪化したのかな?」と感じる変化も、ウェアリングオフによる“薬の波”が関係していることがあります。

また、

睡眠不足/疲労/便秘/食事内容/ストレス

など、様々なことが薬の効き方に影響する場合もあります。

パーキンソン病では、「この飲み方が絶対に正しい」というより、“その人に合った形”を探していくことがとても大切です。

そのため、

「〇〇さんはこの薬で良くなった」
「この飲み方が良いらしい」

という情報が、自分にそのまま当てはまるとは限りません。

不安になると、インターネットや周りの経験談をたくさん調べたくなることもあると思います。
ただ、周りの情報だけを信じすぎてしまうことで、かえって不安が強くなってしまうこともあります。

この記事では、安城市および周辺地域で訪問看護を行う私たちが、

・なぜ”動ける時と動けない時”の差(ウェアリングオフ)が出るのか

・生活の中でどんな場面に注意が必要か

・ご本人・ご家族が知っておくと楽になる”薬との付き合い方”

を、できるだけ分かりやすくお伝えします。

パーキンソン病で薬が効いたり効かなかったりする理由(ウェアリングオフとは)

パーキンソン病では、脳の中の「ドーパミン」という物質が少しずつ減っていきます。

ドーパミンは、体をスムーズに動かすために必要な物質です。

そのため、多くの方は、ドーパミンを補う薬を使いながら生活されています。

初期の頃は、薬を飲むと脳の中にある“ドーパミンをためておく力”がまだ残っているため、比較的安定して効果が続きます。

しかし、病気が進行すると、その“ためておく力”が少しずつ弱くなっていきます。

分かりやすく例えると、初期の頃は「脳の中に薬の成分を少しずつ貯めておくタンク」があるようなイメージです。

タンクがあるうちは、薬の血中濃度が多少下がっても、貯めておいた分で補えるため、効果が長続きします。

しかし病気が進むにつれてそのタンクが小さくなり、薬の血中濃度の上がり下がりがそのまま「動ける・動けない」に直結しやすくなります。

だからこそ、次の服薬時間が近づくだけで急に動きにくくなる、という現象が起きてくるのです。

薬を飲んでも効果を長く維持しづらくなり、

・薬が効く時間が短くなる
・薬が切れると急に動きづらくなる
・効いている時間と効いていない時間の差が大きくなる

といった変化が出てくることがあります。

これが、いわゆる「ウェアリングオフ(薬の波)」です。

薬が効いている時は比較的動きやすい一方で、切れてくる時間帯には、

・歩きづらくなる
・すくみ足が強くなる
・立ち上がれない
・動き出せない
・転びやすくなる
・会話や表情が減る

などの変化が見られることがあります。

これは「気持ちの問題」ではなく、脳の中で薬の効果を安定して保ちづらくなっていることが背景にあります。

なお、薬が「効きすぎている時間帯」に、手足がくねくねと動いてしまう「ジスキネジア」が出る方もいます。

これはウェアリングオフとは逆の現象で、「薬が効きすぎている」サインです。

「動けない」のか「勝手に動いてしまう」のかを区別して主治医に伝えると、薬の調整がしやすくなります。

朝に動きにくい人もいれば、夕方に悪化しやすい人もいます

薬の波の出方は、人によってかなり違います。

例えば、

・朝、ベッドからなかなか起き上がれない
・薬が効くまでは動きづらい
・夕方になると急に歩きにくくなる
・次の薬の時間が近づくと固まりやすくなる

など、困りごとは様々です。

「パーキンソン病だから全員同じ」というわけではなく、その人ごとの波があります。

また、ご本人も、

「昨日はできたのに今日は動けない」
「頭では動きたいのに身体がついてこない」

という強いもどかしさを感じていることがあります。

周りからは分かりづらくても、ご本人の中では大きな葛藤になっていることも少なくありません。

こうした“日による差”は、パーキンソン病では決して珍しいことではありません。

同じように飲んでいても、“良い日”と“悪い日”があります

パーキンソン病では、毎日同じように薬を飲んでいても、調子に差が出ることがあります。

例えば、

・睡眠不足
・疲労
・便秘
・食事内容
・ストレス
・体調不良

などによって、薬の効き方が変わることがあります。

そのため、

「昨日は歩けていたのに、今日は全然動けない」
「今日は薬が効くまで時間がかかる」

ということも、実際によくあります。

ご家族としては不安になると思いますが、“薬をちゃんと飲めていないから”や、“甘え・やる気が無いから”とは限らないのです。

便秘が、薬の効き方に影響することがあります

パーキンソン病では、便秘に悩まされる方が少なくありません。

実は便秘は、「お腹の問題」だけではなく、薬の効き方にも影響することがあります。

パーキンソン病の薬は、小腸で吸収されるものが多いため、便秘によって胃腸の動きが悪くなると、薬が吸収されにくくなることがあります。

その結果、

・薬が効くまで時間がかかる
・いつもより効きが悪い
・急にオフが強くなる

といった変化につながることがあります。

また、便秘が続くことで、食欲低下や体力低下につながることもあります。

「最近なんとなく調子が悪い」
「薬が効きにくい日が増えた」

そんな時、実は便秘が関係していることも少なくありません。

水分・食事・運動・排便習慣などを整えることが、結果的に薬の安定にもつながる場合があります。

しかしながら、便秘が強い時には、改善が難しいこともあります。

そういった場合は訪問看護で、排便状況の確認や、下剤の調整について主治医と相談しながら、便秘ケアを行うこともあります。

状況によっては、看護師が排便をサポートする処置を行う場合もあります。

「便のことは相談しづらい…」と感じる方も多いですが、実はパーキンソン病ではとても大切な部分です。

食事と薬の関係が影響することもあります

パーキンソン病の薬の中には、食事内容の影響を受けやすいものがあります。

特に、タンパク質の多い食事の後では、薬が効きにくく感じる方もいます。

また、人によっては、

・空腹時の方が効きやすい
・水分量で変わる
・柑橘類などで飲み込みやすくなる


といったこともあります。

ただし、薬の飲み方を自己判断で変更するのは危険な場合もあります。

「最近効きづらい気がする」
「飲み方で困っている」

という時は、主治医や薬剤師へ相談することが大切です。

「できるだけ薬を減らしたい」と感じる方もいます

パーキンソン病では、薬の量が増えることに不安を感じる方も少なくありません。

「薬に頼りすぎたくない」
「副作用が怖い」
「できるだけ減らしたい」

そう感じることも自然なことだと思います。

また、薬が増えることで、
「病気が進んでしまったのでは…」
と不安になる方もいます。

ただ、薬の調整は“頑張り不足”ではなく、その時の身体の状態や生活に合わせて行われるものでもあります。

自己判断で薬を減らしたり、飲まない時間が増えたりすると、

・動きづらさが強くなる
・転倒しやすくなる
・活動量が減る
・生活しづらくなる

ことがあります。

パーキンソン病では、薬を安定して続けることが、生活を支える上で大切になることも少なくありません。

気になる症状や副作用がある時は、一人で調整しようとせず、主治医へ相談することが大切です。

焦りや緊張で、さらに動きづらくなることもあります

パーキンソン病では、焦りや緊張によって余計に動きにくくなることがあります。

特に、

・急かされた時
・狭い場所
・方向転換
・人が多い場所
・「早くしないと」と焦った時

などは、すくみ足や動きづらさが強くなることがあります。

そのため、

「早く!」
「なんで動けないの?」

と強く言われることで、さらに身体が固まってしまうこともあります。

ご本人も、“動きたいのに動けない”というつらさを感じていることが少なくありません。

そんな時、ご家族にできることのひとつは、「待つ」という関わり方です。

・「ゆっくりでいいよ」と一言添えてその場を離れる
・床にテープを貼って「またいでみて」と視覚的な目標を示す(視覚的刺激)
・「いち、に、いち、に」とリズムを一緒に取る(リズム法)


こうした工夫で、すくみ足が和らぐことがあります。

「何もできない」ではなく、関わり方を変えることが助けになる場面も多いです。

こうした関わり方は、特別な道具も資格も必要ありません。知っているだけで、今日から使えます

パーキンソン病は、人によって症状や薬の効き方がかなり違います

パーキンソン病では、

・どんな症状が出やすいか
・薬がどのくらい効くか
・副作用の出方
・生活の困りごと

などに、大きな個人差があります。

そのため、

「〇〇さんはこの薬で良くなった」
「この飲み方が良いらしい」

という情報が、自分にそのまま当てはまるとは限りません。

実際には、“その人の生活や症状に合わせて調整していく”ことがとても大切です。

不安になると、様々な情報を調べたくなることもあると思います。

ただ、周りの経験だけを信じすぎてしまうことで、

「先生の治療が合っていないのでは…」

と不安が強くなってしまうこともあります。

もちろん気になることを相談するのは大切ですが、“他の人と同じ正解”を探しすぎなくても大丈夫です

主治医や薬剤師と相談しながら、その人に合った形を一緒に探していくことが大切だと感じています。

「うちの場合はどうなんだろう」と思ったら、それをそのまま相談の入口にしてください。

こんな変化があったら、早めに主治医・訪問看護に相談を

・オフの時間が1日の半分以上になってきた
・薬を飲んでも、以前ほど動けるようにならなくなった
・オフの時間に転倒が増えた
・薬の時間が近づくと、強い不安や焦りが出るようになった(「非運動症状」のウェアリングオフ)

特に最後の「不安・焦り・気分の落ち込み」がオフの時間帯に出る方は、気づかれにくいですが、れっきとしたウェアリングオフの症状です。

「薬が切れてくる時間になると、なぜか気持ちが沈んでくる」という方は、うつや性格の問題ではなく、脳内のドーパミン不足がそのまま気分に影響している可能性があります。

「気持ちの問題」と思わず、ぜひ相談してください。

「薬の時間が近づくと、なぜか気持ちが沈む」「急に不安になる時間がある」——そう感じていたら、それはウェアリングオフのサインかもしれません。

安城市の訪問看護でできること──薬の波への対応

訪問看護では、

・服薬状況の確認
・動きやすい時間帯の把握
・転倒しやすい場面の確認
・生活リズムの調整
・主治医との情報共有

などを行いながら、ご本人・ご家族が少しでも安心して生活できるよう支援しています。

実際には、

「もっと早く相談すればよかった」

と言われることも少なくありません。

薬の波による困りごとは、ご本人だけでなく、ご家族の負担にもつながります。

だからこそ、
「まだ大丈夫かな…」
という段階でも、早めに相談して頂くことが大切だと感じています。

まずはお気軽にご相談ください

私たちの事業所では、現在ご利用いただいている方の約20%(5人に1人)がパーキンソン病の方です。

安城市周辺でも、比較的多くのパーキンソン病の方に関わらせていただいている事業所のひとつだと思います。

毎日の訪問の中で、薬の波による困りごとや、ご家族の戸惑いに数多く関わってきました。

だからこそ、「様子を見ていたら転倒してしまった」「もっと早く相談すればよかった」という声が、他人事に聞こえません。

そして薬の波による困りごとは、ご本人だけでなく、ご家族の負担にもつながります。

「まだ大丈夫かな…」という段階でも、早めにご相談いただくことで、生活の見通しが立ちやすくなることがあります。

一人で抱え込まず、まずは気軽にお声がけください。

「訪問看護ってどんな感じなんだろう?」
「少し話を聞いてみたいかも?」

何でも遠慮なくご連絡ください!

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